開催期日

2021年12月18日(土)13:30〜17:00

 

開催会場

オンライン(Web会議システムZoomを使用します)

※参加費無料

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プログラム

1. 髙城隆一(東京大学大学院)、黒木邦彦(神戸松蔭女子学院大学)

「音調的語と形態統語的語との齟齬:鹿児島県中西部方言の事例から」
要旨:鹿児島県中西部の伝統方言は、体言/用言の別を問わず、2種類の語声調 (word tone) 型を弁別する。これら2型のうち、語(word) (= 国文法に言う文節) の次末尾音節を上昇させるものはA型、末尾音節を上昇させるものはB型と呼ばれる。
同県中西部に分布する串木野方言では、高ピッチ音節は基本的に、語根、接辞、接語から成る語の(次)末尾音節と対応する。ところが、原則から外れる例も少なくなく、このような例外は、(i) 高ピッチ音節を複数持つものと、(ii) 次末尾音節を高めぬA型語ないし末尾音節を高めぬB型語とに二分できる。
 本研究はこのような例外を分析対象とし、串木野方言の語に形態統語的語 (morphosyntactic word) と音調的語とが有り、両者が必ずしも一致しないことを主張する。
同方言と先行研究による近隣方言の記述に基づいて、音調的語の基幹への成りやすさに下記のような階層が設定できることを示す。
zjar- ‘繋辞’ > 擬似繋辞 > 終助詞 > -tjor- ‘継続相’ > toki ‘時’ > 準体 > 接続 > 屈折 > 派生

2.中澤光平(東京大学)

「南琉球与那国方言の撥音化と喉頭音化:音韻変化の条件と相対年代」
要旨:与那国方言にはNnu「昨日」,NKaCi「昔」やTa「蓋」,Kuru「袋」のように,狭母音を含む音節の撥音化・喉頭音化(あるいは促音化)が広く観察される一方,niCi「北〈ニシ〉」,nuTi「横糸〈ヌキ〉」やkiCi「岸」,huCi「蓬〈フツ〉」のように,狭母音であっても変化していない例も見られる。また,muN「麦」(cf. Ndi「右」)やCiN「死〈シニ〉」(cf. Nni「死んで」)のように,複数の音節が変化を生じる可能性がある場合,どの音節が変化するかについても明らかではない。そのため本発表では,既存の資料に基づき,与那国方言の撥音化と喉頭音化の条件と相対年代について分析・考察する。その結果,次の2つの条件が音変化に関わることがわかった:(1) 後続音節の母音の広さ,(2) 語の長さ。母音の広さについては,与那国方言だけでなく,南琉球諸語で広く音韻変化の条件となっている可能性についても述べる。
3.セリック・ケナン(国語研)、青井隼人(東京外国語大学AA研・国語研) 「宮古語多良間方言におけるアクセント単位の定義に関する試論」
要旨:南琉球宮古語多良間方言(以下、多良間方言)のアクセント体系を記述するにあたって、これまで複数の階層的な韻律単位が想定されてきた。音節よりも上位に位置する「韻律語」および「韻律句(=アクセント単位)」(以上、五十嵐2015, 2016)と「メジャー句」(青井2018)がそれである。韻律句の上に位置するメジャー句は、「X=nu Y(XのY)」構造体における特殊な韻律的振舞いを説明するために青井 (2018) によって導入され、その後、同じ振る舞いを示す「X.adn Y(XするY)」構造体についてもメジャー句の解釈が適用できることが主張されている(セリック 2020)。
 本発表では、宮古語の他の方言(特に与那覇方言)との比較を通じて、多良間方言において「韻律句」と「メジャー句」を分ける分析が必ずしも妥当でないことを示す。その代わりに、韻律句の再定義を経て、メジャー句を無くした新たな分析を提案する。この新しい分析は、複合語、「X=nu Y」構造体、そして「X.adn Y」構造体の3つの異なる構造にそれぞれ観察される韻律的現象を統一的なルールで説明することができる点で、従来の分析よりも優れていると言える。この事実は、複合語形成に伴う音韻規則と句形成に伴う音韻規則が共通の原理によって支配されている可能性を示唆している。

対照言語学プロジェクト プロソディー研究班オンライン研究会(2021年度後期)