今年度の研究会は終了いたしました。皆様のご参加、誠にありがとうございました。

 

開催期日

2020年10月9日(金)〜2021年1月15日(金)
全12回

 

開催会場

オンライン(Web会議システムZoomを使用します)

 

プログラム

[終了] 第一回:2020年10月9日(金)15:00〜16:00
Clemens POPPE(Waseda University)
“Morphology and Accent in Japanese and Korean”

Japanese and Korean ‘pitch accent’ systems have been shown to have a number of striking similarities, but also some notable differences (Fukui 2003; Hayata 1999; Ramsey 1978). In this talk I will give an overview of the most important similarities and differences in morpho-accentual patterns and rules in ‘multi-pattern’ (Uwano 1999) accent systems that have been reported for the following varieties: Tokyo Japanese, Kansai Japanese, North/South Kyengsang Korean, and Hamgyeong/Yanbian Korean. The focus will lie on the accent patterns of affixed forms in the broad sense: derived forms, inflected forms, and word-particle combinations. One major difference that can be observed is the relative importance of morphological structure in Japanese compared to Korean. A number of possible explanations for this will be considered from functional and typological perspectives. I will also discuss the relevance of the similarities and the differences between the varieties of the two languages for the typology of word-prosodic systems.

[終了] 第二回:2020年10月16日(金)15:00〜16:00
広瀬友紀(東京大学)
「韻律情報は2度解釈されない:子どもが捉える韻律情報の曖昧性」

日本語において、ピッチアクセントは語彙情報として位置づけられるが、ピッチ変化という情報は、異なる言語レベルでの多様な役割を担う。例えばある語におけるピッチの上昇という韻律現象が、その語を含む形態統語的な範疇の情報を反映したふるまいなのか、特定の統語的句構造に由来するのか、あるいは情報構造上の機能を持つのか、音声入力をリアルタイムで処理する聞き手にとっては多義である状況があり得る。本研究では日本語において三つの有核語からなる左右枝分かれ構造の統語的曖昧性([[青い猫]の傘] (Left Branching) vs. [青い[猫の傘]] (Right Branching) )を題材とする、そこで第二句(「猫の」)のピッチの上昇が統語情報の反映である解釈とコントラスト現象の一部であるという解釈の間でさらなる一時的曖昧性を持つ状況を設定し、韻律情報の実時間処理のあり方について視線計測実験 (Visual World Paradigm)を異なる年齢層のグループに対して行った。成人においては第二句のピッチ上昇を、即時的にはコントラスト情報として解釈した後で、改めてこれを右枝分かれ統語構造の写像であると再解釈することを示す結果が得られた (Hirose 2019)。3〜5歳児においては年齢毎に振るまいが異なり、5歳児ではピッチ情報をコントラストとして解釈し、4歳児では専ら右枝分かれ構造と解釈する傾向があること、また、いずれの場合も、ひとつの韻律現象に与えた解釈は再解釈されないことが示唆された (Hirose and Mazuka, under review)。
Hirose, Y. (2019) Sequential interpretation of pitch prominence as contrastive and syntactic information: contrast comes first, but syntax takes over. Language and Speech, 63 (3), 455-478.   https://doi.org/10.1177/0023830919854476

[終了] 第三回:2020年10月23日(金)15:00〜16:00
米田信子(大阪大学)
「ヘレロ語 (Bantu R31)における名詞の声調体系」

南部アフリカで話されているヘレロ語(バントゥ諸語、ニジェール・コンゴ語族)の名詞は名詞接頭辞と名詞語幹で構成される。本発表ではヘレロ語の名詞の声調について、①名詞語幹には2nとおり (nは名詞語幹の音節数) の声調形が存在すること、②ヘレロ語の名詞には「声調格 (tone case)」と呼ばれる声調による屈折システムがあり、名詞接頭辞の声調によって3種類の屈折形が区別されること、③名詞接頭辞と名詞語幹が結合する際にいくつかの規則が適用されること((i)名詞接頭辞のHは右隣の音節に拡張する、(ii)名詞接頭辞を含めてHが3つ以上並ぶと2つめ以降のHは低く現れる、(iii)Lがあるとダウンドリフトが起きる)、④これらの規則によって屈折形の区別が中和される場合があること、⑤名詞接頭辞の音節数は2音節が基本だが、1音節名詞接頭辞の場合はHの現れ方が名詞語幹の声調形によって異なること、等を報告する。

[終了]第四回:2020年10月30日(金)15:00〜16:00
松浦年男(北星学園大学)
「九州諸方言の与格助詞に見られる音韻交替」

九州地方の諸方言では与格助詞が前接する母音と融合する現象が見られる。天草市本渡方言を例に取ると,ダイガキ ‘大学に’,ドケ ‘どこに’,サリャー ‘皿に’などが挙げられる。これは各地の記述的研究においても言及されているが,散発的なものが多く,交替条件の詳細が分かっているとは言いがたい。例えば,上の例から,この交替には母音前舌化,わたり音挿入,代償延長という3つの現象が関わると見られるが,規則や制約を用いたより一般的な説明はなされていない。また,この交替現象は「仕事に行った」では交替が見られて「見に行った」では見られないなど,形態統語的条件も関わるが,その詳細は明らかになっていない。そこで,本研究では,この与格助詞に関わる音韻交替現象について行った聞き取り,文献,コーパス調査の結果を報告し,記述的,理論的論点を整理する。これは始まったばかりの未発達な研究なので,ぜひ多くのフィードバックをいただきたいと考えている。

[終了] 第五回:2020年11月6日(金)15:00〜16:00
佐藤久美子(国立国語研究所)
「茨城県高萩市方言における不定語を含む文の音調特徴」

茨城県北東部で話されている高萩市方言は無アクセントという特性を持つ。無アクセント方言の文レベルの音調特徴として、高平らのピッチが広がること、その範囲が複数の語にまたがることが指摘されている。後者の特徴は複数の語を含む音韻句の形成を示すものである。このような音韻句形成は無アクセント方言に限らず、ピッチアクセントを有する福岡市方言、トーンを有する長崎市、熊本県天草市、鹿児島県南さつま市方言においても、「誰・何・どこ」などの不定語を含む節に同様の現象が観察される。また、これらの方言では、不定語を含む節の性質([1]「誰が食べた」 [2]「誰が食べたか知らない」 [3]「誰が食べてもいい」)によって音韻句の形成に差異がある。本発表では、無アクセント方言である高萩市方言を対象に、方言間の対照を視野に入れ、上記の三種類の節におけるピッチパターンと音韻句の形成を記述する。

[終了] 第六回:2020年11月13日(金)15:00〜16:00
山田高明(一橋大学大学院生)
「熊本県八代市坂本町方言のアクセント単位拡張現象について」

熊本県八代市坂本町上深水方言(以下、上深水方言)は語の長さに関わらず最大2つのアクセント型が対立する二型アクセント体系を有する。上深水方言には、1つのアクセント型が複数の文節に渡って実現する現象、すなわち「アクセント単位の拡張現象」が見られる(例:「日が」A型+「照る」B型→「日が照る」A型、「鼠が」B型+「いる」A型→「鼠がいる」B型 )。同様の現象は他の九州の二型アクセント方言や福井のN型アクセント方言にも観察されるが、上深水方言においては他の方言と比較してもより広範な環境において起こりうる。本発表では以上のことを研究した山田(2019)以降に行った新たな調査結果をもとに、上深水方言における「アクセント単位の拡張現象」が起きうる環境について報告する。

[終了] 第七回:2020年11月27日(金)15:00〜16:00
田中真一(神戸大学)
「日本語におけるテキストセッティングと音韻構造」

テキストセッティング(あらかじめ決められたスロットに語・句のリズム単位を揃えること)の方策には、種々の言語学的要因が関与する。本発表では「ラーソラ」(定延2005)、野球声援(田中1999, 2008, Ito et al. 2019)、「4x+1」定型歌など異なるタイプのテキストセッティングの分析を通して、それらに共通して見られる方策と言語構造との関係を報告する。まず、「ラーソラ」について入力の長さと音節配列によって異なる型が見られることを新たに示すとともに、それらが野球声援と概ね共通するセッテングであることを指摘する。また、日本語の歌謡にモーラと音節にもとづく「4x+1」の構造を持つ歌が生産的に見られることを示し、各小節内で歌詞に規則的な調整の行われることを報告する。とくに、各行末の「4+1」の部分において、一方では定型詩との、他方では野球声援との共通の調整が行われることを示す。また、形態構造との関わりにおいて、助詞の付加・脱落の選択に4モーラを指向した調整が見られ、オノマトペの「と」付加(那須1995, 田守・スコウラップ1999)との並行性を示すとともに、助詞と内容語の位置にも規則性の見られることを報告する。

[終了] 第八回:2020年12月4日(金)15:00〜16:00
那須昭夫(筑波大学)
「式保存型の接尾辞と音調中和」

接尾辞「-かた(方)」は動詞に後接して名詞を派生するが、その際に動詞の音調を継承する性質がある。たとえば「笑う(平板)」「怒る(起伏)」からの派生名詞のアクセントはそれぞれ「ワライカタ-が=(平板)」「オコリカ]タ-が(起伏)」となり、動詞の音調に対応した二型の対立が起こる。しかし、この対立は不安定で、平板動詞から派生される名詞が起伏式の音調をとる事例も見られる。たとえば「笑い方が」が起伏式の「ワライカ]タ-が」で実現されるような事例である。こうした起伏化が生じると、二型の音調対立が起伏一型に中和することになる。加えて、起伏式の型には次末型(オコリカ]タ-が)と尾高型(オコリカタ]-が)のゆれも見られるなど、派生名詞「V-かた」のアクセントは存外複雑である。本研究では録音調査を通じて「V-かた」のアクセントの実態を把握し、変異の動態に観察される諸特徴について萌芽的な知見を報告する。

[終了] 第九回:2020年12月11日(金)15:00〜16:00
ホワンヒョンギョン(筑波大学)、平山真奈美(成蹊大学)、 加藤孝臣(上智大学)
“Production and Perception of Japanese Downstep”

In the interface between syntax and phonology, it is widely recognized that syntactic information can affect the prosody. Downstep in Japanese is an instructive case to examine the syntax-prosody interaction. In this paper, we investigate the influence of lexical categories on downstep. The results of production experiments suggest that adjectives in [X1 [X2 N]] may block downstep, whereas adjectives in other structures, as well as nouns and verbs generally, do not block it. We propose that the presence or absence of downstep can be accounted for by the interaction between syntactic structures and lexical categories. Further, results of a pilot comprehension test are reported, where we explore whether the degree of downstep affects listeners’ comprehension of the sentence.

[終了]第十回:2020年12月17日(木)10:30〜11:30
田嶋圭一(法政大学)、北原真冬(上智大学)、米山聖子(大東文化大学)
「日本人英語学習者の弱化母音の実現について: 予備的コーパス調査」

日本人英語学習者の英語発音における強勢については産出・知覚の両面から多くの研究がなされている。特にリズムの実現や等時性という観点から,強勢のある音節についての音響分析による研究は数多いが,弱母音についてのそれは比較的少ない。本研究では,大規模な学習者音声コーパス(UME-ERJ)における弱母音に注目し,その音声的実現を調べた。geology-geologicalなどのように強勢位置の交替を含む3-5音節単語について母音長を測定し,同コーパス内の北米英語ネイティブと比較した。その結果,ネイティブはschwaで実現している母音であっても,学習者はcomp[U]tationやgeolog[I]calのように,一部の単語では弱母音を無声化する傾向が見られた。特に後者は有声子音の直後であることから,単に日本語の母音無声化規則を適用するだけでは説明できないことが分かる。一方でphot[o]graph – photogr[a]phyのペアでは,前者の[o]はネイティブと同じ程度まで弱化する一方,後者の[a]は弱化が見られない。母音の弱化について学習者の中において一貫しない複数の方略が混在している可能性もある。以上のような観察結果と予備的考察を報告する。

[終了]第十一回:2021年1月8日(金)15:00〜16:00
松井理直(大阪保健医療大学)
「日本語拗音の時間的性質に関する予備的調査」

日本語の拗音は,一般的に音韻情報として /CjV/ と捉えられることが多い。一方,拗音の音声情報としては,硬口蓋要素を持つ単一の子音と解釈するか,介音として解釈するか,またその介音を子音と見なすか母音と見なすかといったように,いくつかの解釈が考えられるであろう.例えば,Nogita (2016) および Hirayama and Vance (2018) などの研究では,[CjV] という構造が妥当である根拠を提出している.本発表では,これらの先行研究を踏まえ,口唇形状や口腔内の舌接触パターンの時間的推移という観点から,拗音の音声情報について初歩的な検討を行う.

[終了]第十二回:2021年1月15日(金)15:00〜16:00
菅原真理子(同志社大学)
「英語完全母音のプロミネンスレベルと音響特性:予備的結果報告」

強勢アクセント言語である英語では、ピッチアクセント言語である日本語とは異なり、音節の際立ちはピッチのみならず、長さ、強さ、母音の質などを駆使して具現化される。英語の韻律研究では、一般的に「完全母音=強勢あり」と考えられているが、完全母音の音節であっても、主強勢の直前の強弱フットを形成しない語頭音節の場合、母語話者によるプロミネンスレベルの判断が強勢音節と無強勢音節の中間となることが、Sugahara (forthcoming)のアンケート調査で確認されている。Fear et al. (1995)は、この完全母音は音響的にも中間的な特性を示すと報告しているが、文レベルのアクセントが欠如する環境(焦点に後続する環境)などで、弱化が進み音響的に無強勢の曖昧母音により近づくのか、中間的なままのかは未だ明らかでない。発表ではこの点に関して、長さ、フォルマント、ピッチ、スペクトル傾斜などの計測に基づき、予備的結果を報告する。

[終了] 対照言語学プロジェクト プロソディー研究班オンライン研究会(後期)

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